:この記事は以前、インターネット界隈で活動する仲間と共同運営していたメディアで掲載していたものです。

そちらでの活動が節目を迎えたことと、私のファッション関連の情報発信は当サイトで統一したいという思いがあったため、当サイトに引き取りました。

以前のメディアでコメントやイイネをくださった方々、本当にありがとうございました。その方々のおかげでいつも記事作成に没頭できています。

この「服を着て、買って、できる限り長く愛してもらうための話」シリーズは全12話を予定しており、今後は当サイトで公開予定です。暖かく見守っていただければ幸いです。

今回はそんなシリーズの第1話。記念すべきこの回にはほんの少しの問題定義と自己紹介を。

 

 

小さい頃、大人とはどこか「特別なもの」のように感じていた。

身長はお父さんに到底およばなかったし、お母さんの言うことを聞いていれば周りから褒められる。

だから「いつかは自分も大人になる」と理解しつつも、どこか遠い未来のように思っていた。

 

けれど、現実はあっけない。

私の中身はまだまだ発展途上であっても、仮面ライダーは年下の俳優さんが演じるようになり、お酒やタバコは合法になる。

大人になるのは想像より早くあっという間だった。

 

もう1つ、私の中で「大人なイメージ」といえば洋服屋さんの店員だった。

そこまで裕福ではない家庭で育った私にとって、いわゆる「お洒落なショップ」は何かしらの努力をしてようやく入れる場所。

テストで満点がとれたとか、1ヶ月のアルバイトをこなしてお金を貯めたとか、がんばった後のご褒美みたいな存在だった。

 

くわえて、服は根拠のない自信をくれる。

当時の私は女の子にしては身長が高くて、それがコンプレックスで仕方がなかった。

外にでれば「デカいな……」と見られている気がして、わざと背筋を丸めてだらしなく歩いた。

(今思えば自意識過剰なのだけれど、それが思春期の怖いところ)

 

けれど、いざ服を選ぶときはそんな身長もただの個性。いわゆる「お題」みたいなものだった。

服を使ってどう活かすか ―― そう考え始めた時点で、コンプレックスはどうでもよくなっていた。

むしろ心の底から素敵だと思う服を着れば、ごまかすよりも背筋を伸ばして見せびらかしたい気持ちの方が勝った。

 

そんな背景もあったから、私にとってアパレルブランドの販売員さんは心強いアシスト。

自分とは程遠い「大人」だと思っていた。

 

そう思っていたのにも関わらず。

大学2年生の春、私はアパレルブランドの販売員として働き始める。

しかもシンプルなワンピースが3万円、形のいいジャケットが2万円もするような、まさに「大人」なブランドだった。

 

きっかけは、大学OBの先輩から

「興味があるならやってみない?

服飾系の大学に通っているわけだし、卒業後にどうせアパレル業界に就職するならうちのメーカーで一足先に働いてみなよ。

就職活動が本格的になるまでの間だけでもやってみたら、思っていたのとは違ったってならずに済むんじゃないかな」

なんて言葉をかけてもらったことだった。

 

仮面ライダーの俳優さんが年下になったように、お酒やタバコが合法になったように。

私自身も気がついたら大人になり、アパレル販売員になっていた。

今思い返してもちょろい。ちょろすぎる。

 

しかし、「なる」のはちょろくても「なった後」が大変なものは多い。

アパレル販売員もそうだった。

 

どんな服なら身体に負担がかからず毎日着るものとして使ってもらえるか。

どういう手入れをすればお気に入りの服を長持ちさせられるか。

「こうなりたい」という願望をどこまで服で叶えられるか。

 

そんなことをショップの一員として試行錯誤しながら、結局、卒業まで働き続けた。

大学卒業後はアパレルメーカーに就職し、よりたくさんの方に服を届ける仕事をした。

数年前に小さい頃からの夢だったフリーライターになるため退職したのだけれど、今でも大好きな服のことはウェブサイトを作って話している。

 

ここまで、ゆったりと自分のことを話した。

服好きな人間だと認識してもらえたら嬉しいし、ファッションを楽しむことにプラスのイメージをもってもらえたら感無量だ。

 

そのうえで思うのだけれど、今は店員と話さなくても服が買える時代 だ。

海外では無人のコンビニエンスストアが主流になりつつあるし、店員は絶対にいなくてはいけない存在ではない。

 

アパレルに関しては通販サイトも充実している。

ZOZOTOWNやAmazonを使えば家からでる必要もない。交通費もかからない。

また、ほとんどの販売員にはノルマがあって、メーカーには優先的に売りたい推し商品がある。

欲しくないものを売りつけられた経験がある人なら、通販サイトの方が有意義で安心だろう。

(この点に関しては私もめちゃくちゃ同意だ)

 

また、客観的に見てアパレル販売員の労働環境は悪い。

ほとんどのブランドショップが入っているファッションビルや百貨店、ショッピングモールの営業時間はとても長い。

1月1日から始まる初売りや真夏のセールも含めたら、圧倒的に激務だといえる。

くわえて、ブランドによっては肌寒い2月に春物の薄手ニット、まだ暑い8月に冬用のコートを着て接客する。

「自社商品を素敵に見せるのも仕事のうち」という考え方から、7cm以上のヒールを制服としているメーカーもあるのだ。

 

これらの要素から考えると、アパレル販売員は機械にとって代わられるべき無駄な職業なのかもしれない。

ただ、「運命の一着に出会う瞬間」に何度も立ち会った身からすると、

販売員として伝えていた 服を着てもらって、買ってもらって、できる限り長く愛してもらうための知識が無駄だとはどうしても思えない。

 

「衣・食・住」とまとめられるほど、服は人が生きていくうえで欠かせないものだ。

そんな生きていくうえでの必要な出費を、ただの浪費で終わらせないための知識 がある。

当サイトでは全12話にわたって、アパレル店員じゃなくなった今でも伝えたい「服に関する豆知識」を発信していきたい。

こちらの「服を着て、買って、できる限り長く愛してもらうための話」というタグにまとめているので応援してもらえたら感無量だ。

 

知らなくても生きていける。

知らなくても服は選べる。

 

でも、知っていたらお気に入りの服をより長く綺麗に着ることができる。

「選ぶ」だけじゃなく「知る」ことで、あなたが持っている服はより便利になるから。

 

 

:全12話 服を着て、買って、できる限り長く愛してもらうための話

 

  1. 機械がコンビニ店員を勤めるこの時代に「アパレル販売員」はいらないのか
  2. 着る前にとってほしい。仕付け糸は最高の状態で届けるためのものだから

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中馬 さりの

GALLERIA EDITOR
1992年、東京生まれ。文化女子大学にて服装学部にてファッションビジネスを専攻しながら、アパレル販売員とハイブランドの査定スタッフを経験。 卒業後はアパレルメーカーで広報を担当。2016年からフリーライターとして執筆業を開始。多数のメディアへ寄稿をする。 いまは大阪と東京の二拠点生活を満喫中。好きなものは夜ふかしと旅とお洋服。