レディースファッションブログGALLERIA(ガレリア)を運営する 中馬さりの(@chuuuuuman)です。

今回は以下の記事などで報じられたオンワードのZOZOTOWN撤退から自分が感じたことをまとめておきます。

感じたこと……といっても、私はただの服が好きな人です。ZOZOTOWNは普通に使うレベル。お店で買うのも好き。

服飾系の大学に通ったりアパレルメーカーに勤めたりしたこともあるので、ファッション業界に対する愛着も多少はあります。

できれば発展してほしいし、好きな人が増えたら嬉しいなって思う……、そういうレベルのやつです。

 

この記事は、そんな1人のユーザーの考察と思ってもらえると嬉しいです。

「オンワードのZOZOTOWN撤退」「アパレルメーカーのゾゾ離れ」

さてさて、前置きが少し長くなりました。今回のテーマに戻りましょう。

 

そこで見てもらいたいのが最初にもあげた以下の記事。これらは、オンワードのZOZOTOWN撤退に関するものです。

これらを要約すると、以下のような内容です。

 

  • オンワードホールディングスがゾゾタウンから退店。全ブランドの販売を25日で停止
  • 理由は12月25日開始の「ARIGATOメンバーシップ」での値引きがブランドの損益に繋がると判断したこと
  • オンワードの主力ブランド「23区」「自由区」「組曲」などが販売を停止

撤退するブランドはオンワードだけでなく、ほかのブランドも後に続くのではないか。

アパレルメーカー全体が「ゾゾ離れ」しているのではないかと示唆するものもあります。

 

正直、これらのニュースを見た私の第一印象は「ゾゾ離れなんて言葉を作られるくらいの影響力があるのか。すごいな」でした。

日本ではあまりどこのブランドのデザイナーがどうしたとかは報じられないですよね。だからこそ、これほど色んな人の耳に入った「ゾゾ離れ」って言葉は日本のファッション史に残りそう。

ファッション史に名社名が入るってシンプルにすごくない?

(これを見越したのか否か、全社名のスタートトゥデイから株式会社ゾゾに変更してたとしたらさらに凄すぎる)

 

とはいえ、離れるってネガティブな表現ではありますよね。

だからこそ「ゾゾタウンの今までの運営や政策はそれほどダメなことだったのか?」という疑問が浮かびました。

 

ゾゾタウンの今までの運営や政策はそれほどダメなことだったのか?

ゾゾタウンでは特徴的な政策をたくさんとってきました。

現在は終了しているものもありますが、軽くまとめるとこんな感じ。

  • 適正送料をさぐるための「送料自由」
  • 月額350円で送料無料・試着し放題の「ZOZOプレミアム」
  • 支払いを遅らすことができる「ツケ払い」
  • 以前買ったものを買取にだすことで割引につながる「買い替え割」
  • 正確なサイズを把握し通販の試着問題をクリアする「ZOZOスーツ」の無料配布

もちろんこれら全てがうまくいっていたかどうかはわからないです。

個人的な印象で言えば、「ファッション=浪費」のイメージが好きではないためツケ払いは嫌い。(笑)

ですが、今までのアパレル業界の「当たり前」を崩しにいってるのは確か ですよね。

 

また、通販サイトとしてだけではなく、会社として特徴的な取り組みをしていたりもします。

  • 正社員は休憩なしの1日6時間勤務
  • 全社員基本給・ボーナスの一律化
  • 運営ファッションアプリWEARで公認ユーザーへの補助

とくに、上2つの凄さですよ。

薄給・長時間労働が当たり前化しがちなアパレルでこれを公に行うという点を私はすごく素敵だと思う。

まあ、私が前に勤めていたアパレルメーカーの展示会にゾゾの社員さんが夕方18時以降にきてくれていたこともあるから、6時間勤務と言っても叶わないタイミングもあったと思います。

 

でも会社に勤めてたら残業って普通にありますよね。大事なのって残業代がでるかどうか、自分が本当に欲しいタイミングで休めるかだと思うんです。

少なくとも「サービス残業は仕方ない」とか「展示会やセール前は長時間勤務があって当たり前」みたいなこと言ってるアパレルメーカーより健全で働きやすいと思う。

この辺りは順をおって後でもふれます。

 

ちなみにゾゾタウンの株価(5年分)はこんな感じで推移しています。

確かに下がってきてはいるけど、1年もたずに会社が倒産することも多い今の時代。右肩あがりで動いてきたことにはなぜ触れないんだろう……。

 

上記のように今までの政策を見ても株価の変動を見ても、やっぱりゾゾ自体がそんなに悪いことをしているとは思えないんですよね。

 

アパレルメーカーが「何よりも優先すべきこと」とオンワードのZOZOTOWN撤退

かといって別にオンワードを否定したいわけでもないんです。

どちらかというと、オンワードのZOZOTOWN撤退は「アパレルメーカーであり続けるためのものでは?」とさえ思っています。

 

アパレルメーカーであり続けるためには、どうしたって売上をあげなきゃいけません。

売上をあげて、次シーズンの服を用意して、また売上をあげる。この繰り返しをしなくちゃいけないんです。

じゃあ、どうしたら売上をあげられるのか……って考えたときに、重要なのは利益がでる価格で売ること なんですよね。

 

一般消費者にはそんなこと関係ないし、便利な方がいいに決まっています。

けれど、ゾゾタウンなどの販売代理店経由で売れた場合と、アパレルメーカーの直営店や自社運営サイトで売れた場合では利益率が全然違います。

どんな契約をしているかによるけど(たぶんブランド毎に契約内容は違うし)、の某記事を参考にすると4割ほどの手数料がとられてしまうショップもあるようです。

初期からの出店者はともかく新規出店者に対するゾゾタウンの販売手数料率は年々かさ上げされ、近年は35%〜40%にも高騰している。

参考:オンワード全ブランド退店の真相 — ZOZO離れは必然だった | 商業界ONLINE

まあ、結構いいところの手数料ですね。

利益がでないってレベルではないですが、私が勤めていたメーカーだと百貨店の卸額がこれくらいでした。売上がほぼほぼゾゾ経由ってなったらしんどい感じ。

 

だからこそ重要になるのは、アパレルメーカー目線でゾゾタウンへは高島屋や伊勢丹に出店するのと同じくらいの価値があるか という点です。

もちろんゾゾタウンに出品することで新規ユーザーの目に触れる機会が増えて、売上があがる場合もあるとは思います。できたばかりの新ブランドなんてゾゾタウンに出店することがブランドになったりするんじゃないですかね。

これらの場合は「利益をだす」というアパレルメーカーにとって優先すべきことを、ゾゾに出店することで叶えることができます。

 

ただ、正規店の多いオンワードの運営するブランド的にはそうじゃなかった。

ゾゾタウンに卸していた1着を自分達の店頭に置いておけばもしかしたら定価(プロパー価格)で売れたかもしれない可能性が高かったんだと思います。

 

正直、この辺りはブランド毎のターゲット層によります。

ブランドのターゲット層が20代であれば、ゾゾタウンの豊富な決済方法や手軽さ、アプリなどは魅力的に見えると思います。

逆に50代、60代をターゲットにしていたら店頭で1対1の接客込みで提供した方が喜ばれると思うんですよね。

年代だけでなく、アイテムによっても変わります。サイズ感の厳しい靴とかの店頭需要はゼロにはならないでしょう。

実際、オンワードの場合は店舗や自社ECサイト経由での利益も多く、ゾゾに頼るメリットがあまりなかった様子です。

 

結局のところ、オンワードはオンワードで自社の利益を守っただけ だと思うんです。

その方が読まれるのかもしれないけど、オンワードが正しいとかゾゾが正しいとか、そういう話じゃないと思うんです。

オンワードが離れたからってすべてのブランドがゾゾ離れするとは思えません。

各ブランドでターゲット層が違うし、ゾゾとの契約も違うと思いますからね。

 

ちなみに、報道されている記事の中には普段やっているキャンペーン割引をブランドが負担していることを大げさに書いている記事もあったけど、それ割と普通です。

というか、プロパー(定価)じゃない商品ってどこかで誰かが負担してるに決まってますよね。

もちろん館(入っているファッションビル)が負担してくれる割引もあります。でも各ブランドの契約内容によるはず。良い条件で契約がとれるかは、アパレルメーカーの営業さんの腕にかかっています。

(そういうのを説明がどこにもないから、「アパレル=販売員」みたいに思っている人も多くて、営業さん達の仕事が表に出ないのではと思う。大事な職なのに……!)

 

ゾゾタウンのセレクトショップ化

これは私の印象なのですが、最近のゾゾタウンってセレクトショップ化していると思うんです。

セレクトショップは製造はメーカーに任せて小売を担当する業者のことです。アパレル業界では「バイヤー」と呼ばれる買付担当さんがメーカーと話をつけて仕入れをし、自社で販売する形がメジャーです。

有名どころでいうとユナイテッドアローズ、アーバンリサーチ、ナノユニバースなどがあげられます。

これらのショップに並んでいるアイテムって自社で作っているわけではなく、自社で集めた商品なんですよね。(自社作成している商品も一部あるけど)

 

これをふまえたうえで、ゾゾがやっていることを見てみる。

  • 自分達が良いと思うブランドをそろえて(それこそ衣類だけに限らず)
  • テーマに沿っておすすめもして(検索履歴やZOZOスーツの情報から)
  • 各ブランドの宣伝も代わりに行う(WEARやコラムの充実、ZOZOそのもののメディア露出など)

ただのECサイトの域を超えていると思うんですよね。

メーカー視点、こういう活動から最大限にメリットを受け取ったら、それこそ有名セレクトショップに売るくらいの利益がでるのではないでしょうか。

私がZOZOの販売手数料を「まあ妥当かもね……」と思うのは、上記のような取り組みから通販サイトではなくセレクトショップに匹敵する効果が見込めると考える点もあるからです。

もしかしたら。今後のファッション通販サイトはどんどんセレクトショップ化していくのかもしれない。

 

セレクトショップはインフルエンサーよりも消費者に価値を与えられるのか?

ただ、セレクトショップも楽ではないと思います。

セレクトショップの役割をだんだんインフルエンサーと呼ばれる人達が担い始めているのでは と思うからです。

 

○○がしたいんだけど良いモノがないか××さんの動画で見てみよう。

△△さんがInstagramでおすすめしていたから良いはず。試してみよう。

こんな感じで何かを買ってみたり生活に取り入れてみたりしたこと、ありませんか?

 

これ関連のことならこの人を知っておけば大丈夫 ―― そんな存在(インフルエンサー)が増えれば増えるほど、いい感じのものを集めて販売するだけのセレクトショップ業はだんだんいらなくなると思うのです。

だって、インフルエンサーの方が安いから仕入れた商品でもないし、本音のレビューがあって安心だから。

 

その点、ゾゾタウンは幅広くブランドをそろえているものの、社員の試着画像やレビューも豊富でユーザー目線で安心感があります。

企業なのでインフルエンサーよりも身近な感じはしませんが、それでも無機質な通販サイトやセレクトショップよりかは利点が大きいと思う。

100%ではないけれど、ゾゾタウンがインフルエンサー(消費者にとって身近で影響力のある存在)的な力をもつのであれば、ただ並べているだけの店頭より高い手数料をとっても利がありますよね。

ブランドによっては広告費用の節約につながる可能性もあります。

 

ZOZOARIGATOメンバーシップから考える服で世界の平和とファッション業界の平和を実現する方法

こんな風にいろんなことを考えて記事まで書いたのは、ゾゾがZOZOARIGATOメンバーシップを打ち出したときに

「すごくいいな、本当に世界平和につなげるんだ」

って思ったんです。会社の理念、掲げてるだけじゃないじゃんって思ったんです。

 

ZOZOARIGATOメンバーシップに関しては、公式サイトの情報を引用させてもらいます。

ZOZOARIGATOメンバーシップとは、年間プラン:3000円(税抜)または月間プラン:500円(税抜)で「誰か」を応援するためにZOZOが割引をしてくれる会員制サービスです。

入会すると、商品を税抜き価格から10%OFFのARIGATO価格で購入でき、割引した金額で各支援団体や購入したショップの応援をすることができます。

応援先は、以下の3種類からお選びいただけます。
・各支援団体
・購入したショップ
・自分(お客様ご自身)

参考:ZOZOARIGATOメンバーシップ(有料)について

ようは月額制のメンバーになれば常に割引ができ、それで得した分は各支援団体か購入ショップ、もしくは自分のために使えるというものです。

現状、各支援団体として寄付ができるのは以下の5つのようです。

  • 日本赤十字
  • ワールド・ビジョン・ジャパン
  • 国境なき医師団日本
  • WWFジャパン
  • 日本動物福祉協会

ごりごりに世界平和を応援するものですね。

個人的には日本動物福祉協会があることにびっくりしました。

 

そもそも服って着る人がいないとなりたたないものです。

だけど、現状としてファッション業界に圧迫されている人もいるのが事実。

 

代表的なのはバングラデシュやカンボジアとかの低賃金労働です。

バングラデシュは世界第2位のアパレル輸出国って言われている縫製産業国で、2019年現在で約500万人くらい衣服製造に携わっていると言われています。

だがしかし! 技術職として認められているわけではなくて、月収は4,000円くらい。

しかも工場もかなりボロボロで、2013年にはミシンの振動で崩壊する事故(ラナプラザ縫製工場事故)もありました。

バングラデシュのシンクタンク「Centre for Policy Dialogue」が2018年4月にだした報告書では、この事故の生存者の約半数が身体的もしくは精神的な衰弱により今も働けず、補償金も得られていないそうです。

 

海外の話だけでなく日本のアパレル業界の低賃金、ハードワークさは求人情報を見てもらうだけでも明らかです。

だってさ、日本ってお盆も年末年始も服ってファッションビルで買えるじゃん。ブラックすぎない? そんなに1月1日から服って必要? 通販サイトで、1月4日以降の発送とかでよくない???

そういう繁忙期に特別手当があるアパレルメーカーはまだホワイトですが、どっちの方が多いかは歴然としています。

 

若干、話がそれました。戻しましょう。

私は、ゾゾのZOZOARIGATOメンバーシップの寄付先が今あげたような問題を直接的に解決するものではなくても、アパレル業界そのものが抱える「改善できた方がいいよね」ってポイントに向き合う1つのきっかけになるんじゃないか って思ったんです。

ただ、今までの割引って売り残りをさばいてどうにか在庫をなくすためのものだったと思います。それをアパレル業界そのものの改善に当てることができるってかなり新しくないですか?

 

とはいえ、今まで割引をしないことをポリシーにしてきたブランドは賛同できないと思います。ちゃんと説明しないと、消費者からしたら「ただの割引」ですからね。

今までいつも正規価格で買っていたのにゾゾタウンを経由するだけで数%も安くなる……損をしたって感じる消費者もいると思います。だから賛同できないブランドがあるのももっともですよね。

個人的には、ブランドも納得しつつアパレル業界が改善にむかうような政策がでてきてほしいです。ZOZOARIGATOメンバーシップの仕組みはすごくいいと思うんだ……。

 


 

服って人が生きていくうえで絶対に欠かせないものです。

だからこそ「どっちが悪い」「お金儲けしてる」って情報や、大げさな事実や「着れればいい」「安ければいい」という考えだけが前にでるのは嫌でした。

そういうのが積もり積もると、真面目に業界の話をしたり改善策を試したりがしにくい状況になると感じるからです。

ひとりの服好きとして、アパレルメーカーには少しでも長く続くように利益追求をしてもらいたいし、健全に儲けられる新しい仕組みはどんどんできてほしいと思います。

 

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中馬 さりの

GALLERIA EDITOR
1992年、東京生まれ。文化女子大学にて服装学部にてファッションビジネスを専攻しながら、アパレル販売員とハイブランドの査定スタッフを経験。 卒業後はアパレルメーカーで広報を担当。2016年からフリーライターとして執筆業を開始。多数のメディアへ寄稿をする。 いまは大阪と東京の二拠点生活を満喫中。好きなものは夜ふかしと旅とお洋服。